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3DゲームやAI業務もパワフルにこなせる!高性能ミニPC厳選5モデル

 手のひらにのるほどのコンパクトなサイズながら、PCとして十分に使えるだけの性能を備える「ミニPC」。さまざまなメーカーから非常に多くのモデルが発売されており、すでに1ジャンルとして確立された感がある。筆者もそうだが最初は興味本位で触っているうち、いつの間にかメインPCに昇格したという人もいるだろう。

 今回はこうしたミニPCの中から、AMDやIntelの最新CPUを搭載したモデルや、ディスクリートGPUを搭載してゲーミング性能を強化したモデル、ミニPCながら驚くべき拡張性を備えるモデルなど、個性の強い高性能モデルを中心に紹介していこう。一般的なミニPCと比べると価格はやや高めながら、その性能や将来性を考えると満足度の高いモデルばかりだ。

CPUコアやGPUコアの世代が進んで性能が大きく向上

 今回取り上げるハイエンドクラスのミニPCの多くは、AMDやIntelが擁する最新世代のCPUを搭載する。そうしたCPUのメリットとしてまず注目したいのは、古い世代のCPUと比べてコア数やスレッド数が大幅に強化されていたり、内蔵するGPUの性能が大きく向上していることだ。特に最新世代では、旧モデルと比べるとアップデートの幅が大きい。

 下の表は、ミニPCに搭載されることが多いAMDのモバイル向けCPUについて、主要なモデルのCPUコアとGPUコアを整理したものだ。

【表】AMD CPUの世代間比較
CPUコアコア/スレッド数内蔵GPU備考
Ryzen 7 6800HZen 3+8コア/16スレッドRadeon 680Mこの2つはほぼ同じ
Ryzen 7 7735HSZen 3+8コア/16スレッドRadeon 680M
Ryzen 7 7840HSZen 48コア/16スレッドRadeon 780MRyzen 7 8845HSではAI演算用ユニットを追加
Ryzen 7 8845HSZen 48コア/16スレッドRadeon 780M
Ryzen AI 9 HX 370Zen 5/Zen 5c12コア/24スレッドRadeon 890M最新のRyzen AI 300シリーズ
Ryzen AI Max+ 395Zen 516コア/32スレッドRadeon 8060S

 現状の最新世代である「Ryzen AI 300」シリーズに属する「Ryzen AI 9 370」は、CPUとGPUの世代が最も新しい。また長らく8コア/16スレッドだったコア数構成も、12コア/24スレッドに強化されている。CPUやGPUコアの性能は、世代が進むほどに向上し、コア/スレッド数も性能に大きく影響する。結果としてRyzen AI 300世代のCPUを搭載するミニPCは、従来のミニPCと比べるとワンランク上の性能を実現する。

 加えてこうしたAMDやIntelの最新CPUでは、AIに関する処理を専門で担当する「Neural Processing Units」(NPU)を搭載しており、AI演算処理も向上している。MicrosoftではさまざまなAI処理を高速に行なえる「Copilot+ PC」認証プログラムにおいて、一定水準のAI処理性能を求めているが、たとえばAMD製CPUだとRyzen AI 300シリーズより世代が古いモデルではこれを満たせない。今後PCを活用していく上で重要になることが予想される要素の1つだ。

Microsoftは、AIを利用して利便性を高めた「Copilot+ PC」向けのCPUとして、AMDのRyzen AI 300シリーズやIntelのCore Ultra 200Vシリーズを挙げている

 ディスクリートGPUを搭載するモデルでは、3Dグラフィックス性能が大きく強化される。最新のCPU内蔵GPUの性能も向上してはいるが、さすがにミドルクラス以上の独立GPUには及ばない。最新のPCゲームを高度なグラフィックスで楽しめる、コンパクトなゲーミングPCが欲しいというユーザーにオススメだ。

ディスクリートGPUを搭載するMINISFORUMの「AtomMan G7 Pt」と、Ryzen 7 8845HSを搭載するGMKtekの「NucBox K8」で3DMarkのTime SpyとFire Strikeを実行し、Scoreを比較した。文字通り桁違いの性能差がある

 拡張性については、ほとんどのミニPCでSO-DIMMスロットや高速なM.2 SSDを増設できる「空きM.2スロット」を搭載している。ミニPCは内部へのアクセスも容易なので、メモリやストレージの換装、増設は容易だ。こうした「平均的な拡張性」に加え、何とデスクトップPC向けの拡張カードを追加できる拡張スロットや10Gbps対応の超高速有線LANポートを装備するなど、サイズに見合わない拡張性を実現するミニPCも登場している。

多くのミニPCでは、ユーザーが交換可能なメモリスロットやストレージ用のM.2スロットを備える
MINISFORUMの「MS-A2」では、サイズの制限はあるにせよ一般的な拡張カードの組み込みにも対応する

 ここからは数あるミニPCの中から、高性能なおすすめ製品5機種をピックアップしてご紹介する。なお、実売価格は5月28日時点のものとなる。

Core UItra 9 185Hを搭載。スピーカーやAI制御のマイクなども装備
Beelink「GTi14 Ultra AI PC」

Beelink「GTi14 Ultra AI PC」
実売価格 : 12万5,000円前後

 今回紹介する中では唯一、Intel製CPUのCore UItra 9 185Hを搭載するミニPCだ。手のひらサイズの筐体内部には、ステレオスピーカーやIntelのAI制御に対応するマイクを内蔵し、Web会議を快適に行なえる機能をサポート。ミニPCでは非常にめずらしく、電源ユニットを内蔵しており、付属のメガネケーブルを挿すだけで電源供給が行なえる。

 また、同社の専用ドッキングステーションを利用することで、市販のビデオカードを接続してグラフィックス性能を高める機能もサポートする。高性能な冷却システムでCPUをしっかり冷却できる仕組みを備えており、長時間の利用でも安心だ。

製品名Beelink GTi14 Ultra AI PC
CPUCore Ultra 9 185H(16コア/22スレッド)
メモリ16GB×2(DDR5 SO-DIMM)
ストレージ1TB(M.2 NVMe)
OSWindows 11 Pro
主なインターフェイスThunderbolt 4、USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2 5基、2.5Gigabit Ethernet 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4、HDMI、DisplayPort 1.4a、SDカードスロット、PCIe x8
サイズ158×158×55.8mm(ゴム足なし時)
実売価格12万5,000円前後

Ryzen AI 9 HX 370搭載でインターフェイスも充実のスタンダード機
AOOSTAR「GT37」

AOOSTAR「GT37」
実売価格 : 12万9,000円前後

 AMDの最新鋭CPU「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載する高性能ミニPCだ。後ほど紹介するRyzen AI Max+ 395搭載機には及ばないものの、Ryzen 8000シリーズやIntelの第12/13世代Coreシリーズ搭載ミニPCと比べると性能はワンランク上となる。

 高速な無線LANのWi-Fi 7、ビデオカードを接続してグラフィックス機能を強化できるOCuLink、高速なLPDDR5X-8000対応メモリなど、高性能ミニPCらしい装備を満載する。筐体は比較的コンパクトながら、ベイパーチャンバーと大型ヒートシンクを組み合わせた高性能な冷却システムを搭載しており、安心して利用できる。

製品名AOOSTAR GT37
CPURyzen AI 9 HX 370(12コア/24スレッド)
メモリ32GB(LPDDR5X)
ストレージ1TB(M.2 NVMe)
OSWindows 11 Pro
主なインターフェイスUSB4、USB 3.2 Gen 2 4基、HDMI、DisplayPort、2.5Gigabit Ethernet 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.2、OCuLink
サイズ112×106×60mm
実売価格12万9,000円前後

16コアCPUにdGPUを搭載。コンパクトな爆速ゲーミングPC
MINISFORUM「AtomMan G7 Pt」

MINISFORUM「AtomMan G7 Pt」
実売価格 : 16万5,000円前後

 CPUはAMDの「Ryzen 9 7945HX」と最新世代ではないが、16コア/32スレッド対応の超高性能モデル。そしてディスクリートGPUとしてAMDの「Radeon RX 7600M XT」を搭載しているのが大きな特徴で、ゲーミングPCの適性を高めたミニPCだ。3Dグラフィックス性能はかなり高く、ミドルレンジのゲーミングPCに匹敵するレベルとなっている。

 2基のファンや通気性の高い筐体を採用することで冷却性能を高めており、負荷の高い作業時でも動作音はかなり小さかった。側面にはアドレサブルLEDを使ったハデなデザインパネルを搭載しており、美しいイルミネーションを楽しむことも可能だ。

製品名MINISFORUM AtomMan G7 Pt
CPURyzen 9 7945HX(16コア/32スレッド)
GPURadeon RX 7600M XT
メモリ16GB×2(DDR5 SO-DIMM)
ストレージ1TB(M.2 NVMe)
OSWindows 11 Pro
主なインターフェイスUSB 3.2 Gen 2 Type-C(DP対応)、USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2 4基、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4、HDMI、DisplayPort
サイズ61×153.5×268mm(台座なし)
実売価格16万5,000円前後

最新の16コアCPU搭載。拡張スロットや10G SFP+など桁外れの拡張性も魅力
MINISFORUM「MiniWorkStation MS-A2」

MINISFORUM「MiniWorkStation MS-A2」
実売価格 : 17万5,000円前後

 16コア/32スレッドに対応する最新世代の「Ryzen 9 9955HX」を搭載し、ミニPCとは思えないほどの拡張性を誇るミニPCだ。

 M.2スロットは3基搭載し、大容量のストレージを利用できるほか、有線LANは高速な10Gbps対応のSFP+ポートと2.5Gigabit Ethernetポートを2基ずつ装備。さらにはPCI Express 4.0 x16(帯域はx8でサイズはハーフサイズシングルスロットまで)の拡張スロットまで装備する。AI演算用の拡張カードや高性能なRAIDカードを組み込めば、サーバーとしても十分活用できる。

製品名MINISFORUM MiniWorkStation MS-A2
CPURyzen 9 9955HX(16コア/32スレッド)
メモリ32GB×2(DDR5 SO-DIMM)
ストレージ1TB(M.2 NVMe)
OSWindows 11 Pro
主なインターフェイスUSB 3.2 Gen 2 Type-C(PD対応) 2基、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 1 3基、USB 2.0、10Gbps SFP+ 2基、2.5Gigabit Ethernet 2基、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、HDMI 2.1、PCI Express 4.0 x16(x8接続)
サイズ189×196×48mm
実売価格17万5,000円前後

最新鋭のRyzen AI Max+ 395で、今までのミニPCの枠を超える性能
GMKtek「EVO-X2」

GMKtek「EVO-X2」
実売価格 : 22万1,000円前後

 Ryzen AIシリーズのハイエンドモデル「Ryzen AI Max+ 395」を搭載した高性能なミニPCだ。CPUコアは最新アーキテクチャのZen 5で16コア/32スレッドの構成、内蔵GPUはグラフィックスコアを40基も装備する「Radeon 8060S」、さらにこうした内蔵GPUの性能を生かすために高速なLPDDR5X-8000メモリを採用。現時点のミニPCでは最高峰とも言えるCPUの性能を最大限引き出せる環境を整えている。

 こうした高性能なシステムをしっかりと冷却して安定動作させるために、薄型のヒートパイプと複数のファンを組み合わせた冷却システムを装備し、冷却性能も高めている。

製品名GMKtek EVO-X2
CPURyzen AI Max+ 395(16コア/32スレッド)
メモリ64GB(LPDDR5X)
ストレージ1TB(M.2 NVMe)
OSWindows 11 Pro
主なインターフェイスUSB4 2基、USB 3.2 Gen 2 3基、USB 2.0 2基、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4、HDMI 2.1、DisplayPort 1.4、SDカードスロット
サイズ193×185.8×77mm
実売価格22万1,000円前後