山田祥平のRe:config.sys

待ちに待った24H2

 毎年秋にリリースされる恒例の最新Windowsだが、手元の環境がようやく24H2になった。次の最新バージョンが10月に出るとしたら残り期間は4カ月を切っている。特に問題が起こらない限り、アップデートなどするべきではないという意見もあるが、これはちょっと時間がかかりすぎだと思いつつも、ほっとしている。

ついに降臨24H2

 今手元で使っているPCの現行機は、自作のデスクトップ機で、プロセッサが第12世代Core i9-12900K、実装メモリは32GBだ。オンデバイスAIの検証などはモバイルノートを使うことにして、当面はこのデスクトップ機を使い続けるつもりでいる。

 GPUはGeForce RTX 3050で、ちょっと頼りないが、内蔵のIntel UHD Graphics 770を殺さずに併用し、4Kモニターを3台つないで使っている。ぼくの使い方ではそれで不便を感じることはほぼない。

 最近は、AIを使うことが多いが、その多くはクラウドサービスとしてのAIだ。PCに待たされることが多くなったなと感じることがあるのだが、それは使っているPCが遅いのではなく、サービス側のパフォーマンスが低いからだと思うことにしている。

 今後、オンデバイスでのAI利活用の機会が増えてきたところで、それなりのNPUを持つPCに買い替えることにしよう。

 日々の暮らしの中で、使う時間が最も長いのが仕事場に置いたデスクトップPCだ。原稿書きはもちろん、日常的な業務、そして、情報集め、オンライン会議、取材ノートのまとめ、事務処理、メールやメッセージでのコミュニケーションなどなど、フル稼働で使っている。もちろん出先ではノートPCを使うが、やはり充実した環境の自宅仕事場は仕事の効率がいい。

 その愛用デスクトップPCが、ようやくWindows 11 バージョン24H2になった。手元のPCの中では最も遅い更新となった。

降臨を阻む互換性のないハードウェア

 5月17日(土)だったと思う。朝起きると、Windows Updateがシステムを更新しようとしていることに気が付いた。待ちに待った24H2になるようだ。ようやくアップデートされるのかと思ってじっと待っていると、インストールエラーで止まる。表示されたメッセージを読むと、どうやら互換性のないハードウェアがあるらしい。

 確認すると、Dドライブとして使っているWD_BLACK SN770 NVMe SSD 2TBの存在がBSOD(Blue Screen of Deat)を起こす可能性を回避するために、アップデートがブロックされているようだ。

 「Windows 11 24H2アップデートでBSODを解決するために利用可能な内部SSDの重要なファームウェアアップデート」があるというので、サンディスクのサイトからユーティリティをダウンロードし、そのファームウェアをアップデートした。

 重要な注意書きとして、「Microsoft は、ファームウェアが更新されるまで、影響を受けるモデルのシステムが Windows 11 24H2 にアップグレードできないようにする可能性があります」とある。これにひっかかっているのだろう。いわゆるセーフガード措置だ。

 だが、最新のファームウェアに更新したのに、それでもアップデートエラーが続く。毎日チャレンジするのだが、ダウンロード後、インストール中が14%で停止して、互換性のないハードウェアがあるからアップデートできない旨の警告が出る。ファームウェアは最新なのにだ。

 それでも毎日更新チャレンジしていたら、6月3日(火)の朝に仕事場PCをのぞいてみたところ、インストールが完了しているではないか。そのまま再起動してシステムを更新する。表示では20~50分間程度かかるとあるので、急ぎの用事もあって、そのまま外出、夜、家に戻ったら、無事に24H2になっていた。

 実に、ファームウェアを最新にアップデートする対策から2週間以上が経過しての更新完了だった。

段階的に展開される年次アップデート

 バージョン24H2は、一般向けには24年10月で、Copilot+ PC向けとして、各種のAI関連機能が提供されるバージョンとして、24年6月に各社から出荷が開始されたCopilot+ PC向けに先行公開されていた。

 この5月にはすべての個人ユーザーに対して自動配信が開始されたという話も聞こえてきて期待もしていたのだが、そうじゃなかった。

 5月11日付の公式情報では5月2日(金)現在の状況として(Google翻訳で英語を日本語に翻訳)、次のように記載されている。

Windows 11 バージョン 24H2 (Windows 11 2024 Update)が広くご利用いただけるようになりました。設定のWindows Updateからバージョン 24H2 を段階的に展開する作業の最終段階に達しました。

対象となる Windows 10 または Windows 11 デバイスをお持ちの場合は、[設定] > [Windows Update]を選択し、[更新プログラムのチェック]を選択して更新プログラムを探すことができます。デバイスが更新の準備ができている場合は、[Windows 11 バージョン 24H2をダウンロードしてインストールする]オプションが表示されます。ただし、一部のデバイスでは、非互換性が検出された場合、バージョン 24H2 への更新が一時的に表示されない場合があります。非互換性の問題とセーフガードホールドに関する情報は、このページの下部に記載されています。

IT部門によって管理されていないWindows 11 HomeおよびProエディション(バージョン23H2、22H2、21H2)のデバイスは、バージョン24H2へのアップデートが自動的に適用されます。デバイスの再起動時期を選択するか、アップデートを延期することができます。

Copilot+ PCデバイスについては、Windows Insiderコミュニティを皮切りに、一部のデバイスおよび市場向けに段階的に新機能を展開していきます。提供状況は、シリコンプラットフォームによって異なる場合がありますのでご注意ください。

 このセーフガードホールドのおかげで、システムをクラッシュさせ、起動できなくなってしまったり、最悪の場合、データを失うような事態にならなくて済むということでもある。ほかの環境より半年遅れくらい気にするなと言われたら、その通りと言わざるを得ない。

 このページでは、Windowsの現行バージョンの既知の問題と通知、そして解決された問題が列挙されている。だが、今回遭遇したSanDiskのWD SSDについては報告が見つからない。なのに、Windows Updateはその障害の可能性を知っていて、更新をロックした。この問題は、24H2が一般向けに公開された昨秋から起こっていたからこそ、Microsoftは更新をロックしていたのだ。

 以前64MBだったSSDのホストメモリバッファ(HMB)が、24H2で200MBに拡張されたことが原因になっていたようだ。そして、この問題を回避する新しいファームウェアは、昨秋、問題が発生したのとほぼ同時にリリースされていたのだ。なのに、手元の環境は、そのまま半年以上ロックされたままだった。

25H2は目の前

 システムは新しいほうがいいというわけではないが、同じハードウェアで快適に使えるのならそのほうがいいと思っている。

 石橋を叩いて渡るようなセーフガード措置はありがたいことはありがたいし、そのおかげで重要なデータを失う事故に遭わずに済んだのかもしれない。けれども、もう少しリーズナブルに最新環境を提供する方法も考えていいのではないか。

 これだと、手動で強引に更新してしまって被害に遭ってしまうユーザーもいるかもしれない。個人的にも、起動ドライブでもないのだから、いっそのこと再インストールしてしまおうという悪魔のささやきにのりかけてもいたのだが思い留まっていた。

 そもそも普通のユーザーが、正常に稼働しているPCのSSDが、ホストメモリバッファの問題でブルースクリーンエラーを起こすことなど想像できるだろうか……。

 Windows 11は2021年のリリースで、今年はリリース後、4年目だ。年間機能更新プログラムが毎年後半、10月を目途にリリースされる。今回の24H2は、歴代の更新の中でも、もっとも難産なのではないか。

 個人的にはエクスプローラーの右クリック時のコンテキストメニュー表示で、ボタンに「切り取り」、「コピー」、「名前の変更」といった文字による説明が付いたり、タブを複製できるようになったことを歓迎しているくらいだが、ここまで安定したWindowsというのもなかなかなかったように感じている(褒めている)。