西川和久の不定期コラム

Ryzen 7 260搭載で高コスパ、OCuLinkも搭載のミニPC「MINISFORUM AI X1」

MINISFORUM AI X1

 今回はRyzen 5 225、Ryzen 7 260、Ryzen AI 9 365、メモリ32GB/64GB、そしてベアボーンも選べるミニPC「MINISFORUM AI X1」の登場となる。編集部からRyzen 7 260/32GB/1TBモデルが送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 5 225、Ryzen 7 260、Ryzen AI 9 365、32GB/64GB、ベアボーンを選べるミニPC!

 本コラムで3月にRyzen AI 9 HX 370を搭載し、Copilot+ PC認証を取得したミニPC、MINISFORUMの「AI X1 Pro」をご紹介した。

 旧Mac mini的なサイズ感で、ミニPCとしては少し大きめだったが、AI対応でかつハイパフォーマンスでなかなか良い1台だった。今回はこの姉妹機に相当する“Pro”がない「AI AX1」となる。

 選べるプロセッサはRyzen 5 225、Ryzen 7 260、Ryzen AI 9 365。最上位でもRyzen AI 9 365なので、上記のAI X1 ProのRyzen AI 9 HX 370には敵わない感じだが、その分、価格は下がる。

 メモリは32GBまたは64GB、SSDは1TB、Windows 11 Proまたはベアボーンと構成を選べる中、今回手元に届いたのはRyzen 7 260/32GB/1TB。主な仕様は以下の通り。

Minisforum 「AI X1」の仕様
プロセッサRyzen 7 260(8コア16スレッド、クロック最大 5.1GHz、キャッシュ L2: 4MB、L3: 16MB、TDP 45W/cTDP 35~54W)
メモリ32GB(SO-DIMM/16GB DDR5-5600 2基/最大64GB)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応) 2基(1基空き/OCuLinkと排他)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスRadeon 780M Graphics/HDMI 2.1、DisplayPort、Type-C(USB4) ×2
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
インターフェイスUSB 3.2 Gen 2 2基、USB4 2基、USB 2.0、3.5mmジャック、OCuLink
サイズ/重量128×128×52mm、653g(実測)
価格10万1,590円(公式サイトでは5月9日までクーポン「PWX113」利用で1万3,000円引き)

 プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 7 260。8コア16スレッド、クロックは最大 5.1GHz。キャッシュ L2: 4MB、L3: 16MB。TDPは45W(cTDP 35~54W)。また最大16 TOPSだがNPUも内包する。

 メモリはSO-DIMM DDR5-5600MHz 16GB 2基の計32GB。最大64GBまで対応。なお最上位のRyzen AI 9 365は32GBを選べず64GBのみ。加えてメモリ最大128GBとなる。ストレージは、M.2 2280 SSD 1TB。M.2スロットが2つあるので増設も可能だ。ただしOCuLinkアダプタとの排他なので要注意。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 780M Graphics。外部出力用にHDMI 2.1、DisplayPort、Type-C(USB4) 2基を装備する(Ryzen AI 9 365は880M)。

 OSはWindows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用し評価した。

 ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4。その他のインターフェイスは、USB 3.2 Gen 2 2基、USB4 2基、USB 2.0、3.5mmジャック、OCuLink。このコンパクトな筐体でUSB4 2基とOCuLink対応はなかなか強烈だ。

 サイズは128×128×52mm、重量653g(実測)。「AI X1 Pro」が約195×195×42mm(実測)、1,397g(実測)だったので、随分コンパクトなのが分かる。

 価格は今回の構成で10万1,590円。Ryzen 7 260の構成限定だが、5月9日まで公式サイトで利用できるクーポン「PWX113」が今回用意されており、適用後は1万3,000円引きにより、メモリ32GB+1TBモデルは8万8,590円、メモリ64GB+1TBモデルは10万2,990円になる。

 参考までにRyzen 5 255/32GB/1TBは8万3,990円、Ryzen AI 9 365/64GB/1TBは13万7,590円といった具合だ。

 ベアボーンはプロセッサのSKU順で5万9,190円、7万3,590円、9万7,590円。手持ちのパーツがあるならこちらを選ぶのもありだろう。特にRyzen AI 9 365を最大メモリ128GBにしたい場合は、ベアボーンからにしないと選択の余地がない。

前面は電源ボタン、USB 3.2 Gen 2 2基、USB4、3.5mm音声入出力
背面。DC電源入力、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、OCuLink、USB4、HDMI、USB 2.0
底面とiPhone 16 Proの比較四隅にネジとゴム脚、下側にVESAマウンタ用のネジ穴。このクラスとしては少しコンパクトな方だろう
付属品。ACアダプタ(サイズ約95×65×23mm、重量227g、出力19V/6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタとネジ、OCuLinkアダプタ
BIOSのMainメニュー。起動時[DEL]キーで表示
BIOS(Setup)
重量は実測で653g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-Cケーブル1本で接続可能

 筐体はメタリックなシルバー、そしてiPhone 16 Proの比較からも分かるように結構コンパクト。重量が実測で653gと軽く、ACアダプタを合わせても1kgを切るため持ち運びも容易だ。

 前面に電源ボタン、USB 3.2 2基、USB4、3.5mm音声入出力。背面に電源入力、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、OCuLink、USB4、HDMI、USB 2.0を配置。裏面には四隅にネジとゴム脚、下側にVESAマウンタ用のネジ穴がある。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ約95×65×23mm、重量227g、出力19V/6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタとネジ、OCuLinkアダプタ。出荷時OCuLinkアダプタは本体に装着されておらず、背面のコネクタ部分はゴムで塞いだ状態になっている。

 いつも筆者が使っているキーボード付きモバイルモニターは、USB4があるため、USB Type-Cケーブル1本でOK。BIOSは起動時[DEL]キーで表示するが、まずMainメニューがあり、そこでSetupを選べばBIOS相当が現れる具合だ。

 内部へのアクセスは四隅のゴム脚を外す必要はなく、その外側にネジがあるので4本を外すだけでOKだ。ただ、裏蓋にケーブルが2本つながっているので、思いっきり引っ張ったりするとトラブルの元になるので、慎重に行ないたい。

 裏蓋側にファンとアンテナケーブルがあり、PC側にはCrucial製のSO-DIMM 2基とM.2 2280が見える。M.2スロットは1つ空き。OCuLinkを使う場合は、この空きのM.2スロットへOCuLinkアダプタを接続することになる(写真は該当箇所に置いただけでネジ止めなどはしていない)。

四隅にネジがあるのですべて外すと裏蓋が開く。2本ケーブルがつなっているので要注意
裏蓋にファンがある
OCuLinkはこんな感じで取り付ける(写真は該当箇所に基板を置いただけ)。M.2スロット1つ使うため、2つ目のSSDが増設できなくなる

 発熱はベンチマークテストなどCPUに負荷をかけた場合、背面側からそれなりの熱風が放出される。とは言え、少し暖かい程度なので気にすることもないだろう。ノイズに関しては筐体に耳を近づけてもほとんど聞こえず。これなら机の上どこでも設置可能だ。

Ryzen AI 9 HX 370より少し劣るものの、十分ハイパフォーマンス!

 初期起動時、特に追加されたアプリや壁紙などはなく、Windows 11 Pro標準のまま。構成が構成なだけにストレスなく動作する。逆にこのコンパクトな筐体でこれなのだから、感心した次第。

 M.2 2280 1TB SSDは「CT1000P3PSSD8」。仕様によると、シーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト3,600MB/s。CrystalDiskMarkのスコアは同等以上が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約929GBが割り当てられ空き881GB。BitLockerで暗号化されている。

 2.5Gigabit Ethernetは「Realtek Gamming 2.5GbE Family Controller」、Wi-Fiは「MediaTek Wi-Fi 7 MT7925」、BluetoothもMediaTek製だ。デバイスマネージャーにNPUの項目も見える。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 1TB SSDは「CT1000P3PSSD8」。2.5Gigabit EthernetはRealtek Gamming 2.5GbE Family Controller、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 7 MT7925、BluetoothもMediaTek製。NPUの項目も見える
ストレージのパーティションはC:ドライブのみの1パーティションで約929GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
AMD Software Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23」。比較のためにRyzen AI 9 HX 370搭載のAI X1 Proのスコアも併記した。

 やはり全体的にRyzen AI 9 HX 370が優っているものの、PCMark 10のグラフィックス関連以外は少しの差だ。iGPUがRadeon 780MかRadeon 890Mかの差で、PCMark 10のグラフィックス関連及び3DMarkは、それなりの差が出ている。

 この点が気になるので、あれば最上位のRyzen AI 9 365のiGPUがRadeon 880Mなので(それでも890Mには劣るが)、こちらを選べば良いだろう。ただOCuLinkを使えば、それこそ外部にGeForce RTX 4090などハイエンドGPUを搭載できるので、グラフィックス性能を重視するなら、いっそOCuLink接続をお勧めする。

PCMark 10 v2.2.2737
3DMark v2.31.8385
Cinebench R23
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  5197.843 MB/s [   4957.0 IOPS] <  1611.94 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2602.282 MB/s [   2481.7 IOPS] <   402.70 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   447.089 MB/s [ 109152.6 IOPS] <   283.85 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    62.282 MB/s [  15205.6 IOPS] <    65.64 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  4749.336 MB/s [   4529.3 IOPS] <  1761.89 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  3458.725 MB/s [   3298.5 IOPS] <   302.87 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   492.159 MB/s [ 120156.0 IOPS] <   263.07 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   170.078 MB/s [  41522.9 IOPS] <    23.99 us>

 以上のようにMinisforum 「AI X1」は、Ryzen 5 225、Ryzen 7 260、Ryzen AI 9 365と、3つのプロセッサ、メモリ32GBまたは64GBを選べるミニPCだ。加えてベアボーンキットを選べるのも手持ちのパーツを使いできるだけコストを抑えたい時に嬉しいポイントとなる。

 OCuLinkを使った時に、M.2スロットが1つになってしまうのは残念だが、最新のモバイル用Ryzenを使ったミニPCを探しているユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。