やじうまミニレビュー

ユニット2個+ファン強化した着るエアコン「ソニーREON POCKET PRO」をいち早く体感!

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
REON POCKET PRO

 REON POCKETは、ソニーサーモテクノロジーが開発したウェアラブルサーモデバイスだ。首元で身体を冷やしたり温めたりする機能を備え、2024年4月に発売されたREON POCKET 5はシリーズ5代目となる。

 例年、ゴールデンウィーク前に新モデルが発表/発売されるREON POCKETだが、2025年は音沙汰がなく、筆者は新型を心待ちにしていたものの肩透かしを食らった気分だった。

 ところが、ゴールデンウィーク後の5月にREON POCKETの新作が発表される情報をキャッチ。しかも今回はナンバリングモデルではなく「PRO」モデルだ。これは試さずにはいられない。

 ちなみに製品は本日より発売しており、価格はオープンプライス、実売価格は「REON POCKET TAG」付きの「RNPK-P1T」が2万9,700円前後、なしの「RNPK-P1」が2万7,500円前後となっている。今回は製品サンプルの事前提供によるレビューをお届けする。

REON POCKET PROのパッケージ。REON POCKET TAGが同梱されたモデル(RNPK-P1T)と、本体のみのモデル(RNPK-P1)が用意されている。本レビューではRNPK-P1Tを使用

REON POCKETとは?日常を快適にするサーモデバイス

 REON POCKETシリーズは、初代モデルがクラウドファンディングから始まったユニークなプロジェクトだ。普段の生活や軽い運動での快適さを目指しており、激しいスポーツ向けではなく、日常の心地よさを支える製品である。

 核となる技術は「ペルチェ素子」、いわゆる「サーモモジュール」だ。異なる金属や半導体をつなぎ、電流を流すことで熱を吸収したり放出したりする。電流の向きを変えることで冷やすことも温めることも可能。この「冷(れい)」と「温(おん)」の両方が使える点が、REONという名前の由来だ。

 ただし、ペルチェ素子は冷やす面の裏で熱を生み出すため、熱が戻れば効果が薄れる。熱を効率的に逃がす設計がこの製品の鍵となる。

REON POCKET PRO

 REON POCKET PROは、これまでのモデルとは異なる「ハイエンドモデル」だ。その特徴は、「冷却面積2倍」、「最大吸熱量2倍」、「最大駆動時間2倍」(いずれもREON POCKET 5比)に集約される。どのように実現したのか、詳しく見ていこう。

デザインが一新されたREON POCKET PRO。本体色は落ち着いたライトグレー
本体が長くなり、体にフィットする角度がつけられた「カーブドデザイン」

サーモモジュールを2枚搭載するDUALサーモモジュール

 REON POCKET PROでは、従来1枚だったサーモモジュールが2枚に倍増。これにより、冷却面積が2倍(REON POCKET 5比)になった。PCでたとえるなら、CPUがシングルコアからデュアルコアに進化したようなものだ。

風量2倍の放熱ファンを搭載

 REON POCKETは、サーモモジュールから発生する熱をヒートシンクで受け止め、ブロワー型の放熱ファンで外部に放出する構造だ。

 REON POCKET PROでは、放熱ファンの風量が2倍(REON POCKET 5比)に強化され、ファンとヒートシンクのサイズも大型化している。

左:REON POCKET 5のファン、右:REON POCKET PROのファン
左:REON POCKET 5のヒートシンク、右:REON POCKET PROのヒートシンク

バッテリが大型化

 サーモモジュールが2枚になり、最大駆動時間2倍(REON POCKET 5比)を実現するため、バッテリも強化された。

左:REON POCKET 5のバッテリ、右:REON POCKET PROのバッテリ

 仕様ではバッテリ電圧が3.7Vとあるが、容量は不明。そこで、USBテスター(POWER-Z KM002C)で積算電力量を測定したところ、約27Whだった。

REON POCKET PROの充電タイムチャート。筆者の環境では充電時間は約3時間

REON POCKET永遠の課題、冷感慣れに立ち向かう

冷感慣れとは

 REON POCKETを長時間使用すると、最初の「ひんやり感」が薄れることがある。たとえば、「使い始めは首元が冷たくて気持ちよかったのに、今はあまり冷たく感じない」という現象だ。これを筆者は「冷感慣れ」と呼ぶ(メーカー公式の名称ではない)。

 原因は、サーモモジュール(ペルチェ素子)の冷たさに皮膚が順応し、感覚が鈍くなるためだ。人間の皮膚は、一定の温度刺激が続くと慣れてしまう特性がある。冷たい水に手を長く浸けると、冷たさを感じにくくなるのと同じ原理だ。

REON POCKET PROの対策

 これまでのREON POCKETでは、冷感慣れ対策として冷却の強弱を自動調整する機能が搭載されている。「WAVE MODE(REON POCKET PROは非対応)」では冷却強度を周期的に増減させ、刺激に変化を持たせて慣れを防いでいた。

 「REON POCKET 3」から搭載された「SMART COOL MODE」では、温度/湿度センサーやREON POCKET TAGが環境や身体の状態を検知し、冷却レベルを自動調整する。これにより、単調な冷感を避け、長時間の快適さを維持しやすくなっている。

 しかし、これらのモードでは、冷却が弱まる際に不快感が生じることがあった。筆者はこれまで、冷感慣れした箇所からデバイスを少しずらすことで感覚をリセットしていたが、頻繁な位置変更は面倒だった。そのためサーモモジュールのエリア別制御を待ち望んでいたわけだ。

 REON POCKET PROの「DUALサーモモジュール」は、この願いを実現したようなもので、2枚のサーモモジュールが強弱をつけながら交互に駆動することで、冷却を持続させることができる……つまり冷感慣れによる不快感を軽減している(と思われる)。

2つのサーモモジュールが交互に冷やすイメージ

 温度ロガーで動作を検証したところ、SMART COOL MODEやマニュアルモード問わず、2つのサーモモジュールは互いを補うように温度を上げ下げしていた。従来の1枚サーモモジュールでは1分間に最低温度を3回目指していたが、2枚に分散することで6回となり、より効率的な冷却が実現している。

2つのサーモモジュールに熱電対を取り付けて測定。今回は無負荷状態でテストしている
SMART COOLで最も強い「強冷」
マニュアルで最も強いCOOLレベル5
参考:REON POCKET 5。昨年発売のREON POCKET 5のCOOLレベル5

電池の持ちを検証

 最大駆動時間が2倍になったという電池持ちをベンチマークした。

 前回のREON POCKET 5レビューと同様、ホットプレートを人肌温度相当の38℃に設定してテストを実施する。

人肌温度を再現するホットプレート

 ホットプレートはUSB PD 20Vで動作するため、USBテスター(POWER-Z KM002C)で積算電力量を記録。REON POCKETが冷やそうとする力と、ホットプレートが一定温度を保とうとする力がぶつかり合うため、ホットプレート側の電力量を性能の参考値とした(あくまで参考値)。

 なお、レビュー時間の制約上、従来機種の結果はREON POCKET 5のデータを流用している。

テスト風景

COOLレベル4

 センサー制御せず、マニュアル出力のCOOLレベル4でテスト。公式仕様通り、10時間連続動作を確認した。

COOLレベル4の結果

SMART COOL MODE「強冷(旧:冷ため)」

 SMART COOL MODEの「強冷(旧:冷ため)」でテスト。ホットプレートは上側のサーモモジュールにのみ接触させた。

 結果は、COOLレベル4の約半分程度。「やや強冷」設定では8時間半の動作を確認したが、ターゲット温度に到達しない「手を抜いた状態」だったため、今回は掲載を見送った。ただし、実際に「やや強冷」で6時間外出しても電池残量に余裕があり、8時間程度は持つと推測される。

SMART COOL MODE「強冷(旧:冷ため)」の結果

実際に使ってみると

DUALサーモモジュールの効果

 DUALサーモモジュールは、両方のサーモモジュールが冷えていることをしっかり感じられる。特に下側のサーモモジュールは、筆者の場合、肩甲骨付近で冷えるため、最初は子どもの頃、友人に冷たい手を入れられた懐かしい感覚を思い出した。慣れると心地よい冷たさを感じられる。

 ただし、両方の接触部位が冷感慣れしてしまう場合もあり、完全解決とは言えない。それでも、初夏の陽気で1日使用した限り、不快感はなかった。

本体サイズの影響

REON POCKET PROは従来機種より一回り大きい

 REON POCKET PROは、冷却面積や電池容量の強化に伴い本体サイズが大型化。筆者の場合、下側のサーモモジュールが肩甲骨付近に接触する。

 しかし、サイズゆえに椅子やバックパックとの相性に課題がある。オフィスチェアの「ミドルバック」、「ハイバック」では背もたれに当たる。背もたれが在来線のロングシート程度なら問題ない。バックパックはショルダーストラップで調整すれば併用可能だが、体への負担が増えるなど、フィッティングに課題が残る。

ネックバンド

 REON POCKET PROのネックバンドは、従来の白色からグレーに変更。REON POCKET 4以降のシリコン素材は紫外線で黄ばみやすいが、グレーなら目立ちにくい。

 ネックバンドは本体表面の取り外しボタンで外せるが、使用中にボタン反対側が外れることが何度かあった。万が一落下してしまったとしても服の中でキャッチできれば問題ない。

ネックバンドが取り外しボタンの反対側から外れることがある

センサー

REON POCKET PROに追加されたセンサー

 REON POCKET PROには、4つの温度センサー、温湿度センサー、加速度センサーに加え、新たにタッチセンサーが搭載された。これにより、装着/取り外し時のAUTO START/STOP機能の反応が向上した。

 REON POCKET TAGは、RNPK-P1Tでは同梱されているが、本体のみのRNPK-P1では別売となる。TAGを使用することで、SMART COOL MODEなどで本体側のセンサーだけでは対応しきれない環境変化を補い、効果を発揮する。また、冷却と温熱を自動切り替えるSMART COOL⇔WARM MODEに対応する点も特徴だ。

 ただし、センシングは体温や環境変化に対応するが、個人の体感温度の好みは「強冷」などのプリセットに限定される。体感温度のフィードバックで最適化できれば、より「PRO」にふさわしい製品になるだろう。

本体側のセンサーにより設定が変更された
REON POCKET TAGには温度センサーはもちろん、照度センサーも搭載している

REON POCKET PRO専用ケース

 従来のREON POCKET向けケースはサイズが合わないため、REON POCKET PRO専用ケースが新たに発売された。

各種アクセサリーが無理なく収納可能
REON POCKET PROのロゴ入り

まとめ

 REON POCKET PROは、従来のナンバリングモデルとは別ラインとなるハイエンドモデルだ。冷却面積、吸熱量、駆動時間を従来の2倍に引き上げ、快適性を飛躍的に向上させている。目玉の「DUALサーモモジュール」は2枚のサーモモジュールが交互に冷却し、冷感慣れを抑えて持続的な清涼感を提供。強化された放熱ファンと大型バッテリで、長時間の安定性能を実現する。

 制御面では、センサー数の増加でセンシング精度が高まっているものの、体感温度の好みや通勤・在宅のシーンごとの最適化が今後の課題と感じる。また、本体のサイズアップにより、椅子やバックパックとの相性があることは覚えておきたい。

 来年はREON POCKET 6か、PROの後継か、進化に期待がかかる。今年はREON POCKET PROで快適な夏と冬を戦いつつ、次の一手を楽しみに待ちたい。